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2012年05月13日

写真家 石川真生に恋をした。

「人のことにいちいち口を出したがる
狭い島国だからこそ
好きなことを自由にやりたいと思ったし
いまもそう思ってる。
歳を重ねるごとに、どんどん過激にやっていきたいね」


存在そのものがパンクでアナーキーな女性。
なのに人一倍臆病で、気弱で、傷つきやすい人。

自らをイバヤー(威張ってる人)とかガージュー(気の強い人)と言ってのける。
その心の奥にあるのは言葉のままの彼女ではなく、
その言葉の裏にあるのは、ありのままの彼女であるための
自分を自分らしく保つための決意のようなものだとぼくは思う。

去年の夏、初めてのこんにちは。去年の秋、初めて少し言葉を交わし、そして昨夜が三度目で
彼女のことをまだ何も、知らないからこそ、そう思おう。


写真家 石川真生に恋をした。


那覇市のBar&Gallery土で「復帰」の日の5/15まで開催されている
石川真生写真展「沖縄ソウル」に昨日出掛けてきた。

15:00〜20:00 入場無料。ポスターには「展示作品はすべて販売しております」
と赤字で大きめに書いてある。なんでだろうと「1秒だけ」疑問に思った。

「撮られるだけの島じゃダメ、撮る島でないと」
「私たちはガイドじゃないのよ。自分たちが苦労して見つけたロケーションを
どうしてホイホイ、内地の写真家に教えなきゃいけないのよ」

言葉だけだと少し辛辣に聞こえるかもしれない。
実際、「沖縄は守礼の国のはずなのに、あなたって傲慢な人ね」
というようなことを言われたこともあるという。
けれども、被写体との関係や場によって作品の善し悪しが
大きく左右されることを考えれば、真生さんのそれは当たり前の反応だし、
沖縄が沖縄であることが、普通のことではなかったことを
思い浮かべれば、至極自然な話なのだ。

復帰前の少女時代。
北海道から運ばれてきた雪や
スズランを見た時に
小さな日の丸を降る時に
日本に少しときめくなかで、
6歳だった永山由美子ちゃんがレイプされ
惨殺されて捨てられた話。
それを聞いて子ども心に「何だろう沖縄は」と感じたという真生さん。

高校時代に迎えた復帰運動。
内地からやって来た新左翼の学生と恋に堕ち、
映画のような映像を目の前に眺め、
自ら主役を演じてきた真生さん。

彼女に神が降りてきた。写真の神様。
そして彼女は写真家になる。

根っこにあるのは常に沖縄。
沖縄は私たちが撮るという強い思い。
「基地のある沖縄って何だろう」という疑問。

撮りたいかどうかは自分で決める。
撮りたいと思った著名人を撮るときも、
他人が書いた情報は一切読まない。
他人の見る目で先入観を持ちたいくないから。

その一方で、この人はいい人だ、嫌な人だと
決めつけることもしようとしない。
人を評価することほど恐ろしいことはないから、だという。
「でもたまに生理的にダメな人とかいるのよね」
と笑いながら言うのが真生さんらしい。

「醜くても美しい人の一生。私は人間が好きだ」
彼女の座右の銘だそうだ。

彼女が写真を撮るのは人を知るため。
そして、彼女は人間が大好きなのだ。

「街を(コンセプトや狙いもなくただ無目的に)流しながら、
(望遠を使って)相手に気付かれにようにして撮った写真が多いような気がするのよね。
私はあんまりたくさんの写真を見てるわけじゃないからさ、私の印象なんだけどね」
傷つこうとしない、汗をかこうとしない写真家が増えているそうだ。

「あなたもそうでしょ」って言われてるようで居心地が悪い。
彼女は撮りたい写真を撮るために、頭にも汗をかき、身体にも汗をかき
そして心には涙を流してきたのだろう。

彼女の撮りたいものは沖縄で、それは基地。
基地は米軍そのものだし、米軍は米兵そのもの。
白人と黒人との構図はそのまま日本と沖縄の関係性。
だから黒人兵を撮る。
だから米兵相手のバーで働く。

そのようにして撮りたい対象に自ら進んで飛び込んでいく。
身の危険もあるだろうし、家族や親戚や世間の目もある。
けれども彼女は彼女らしく沖縄らしい沖縄を撮る。

そのようなキャリアが彼女を本物に押し上げていったのだろう。
冗談も言うし、セックスも好きだし、ただ酒だけはだめだという
真生さんは、自分の欲望にいたって忠実、自然体。

イデオロギーとか正義とか、そういうものとはちょっと違う
もっと生温かくて、汗の匂いが少しする、
そして甘酸っぱいときめきとか、
黒い憎しみとか、音をたてるいらだちとか
そういう諸々の彼女の一部たちが
肩を寄せて一つになって、シャッターにかけた指を押すのだろう。

だからこその『日の丸を視る目』。
そして現在撮影中の秘密のプロジェクト。


彼女は手間ひまが生み出すものが好きだと言う。

例えば教会の宗教画。何人もの人が何日も何年もかけて
絵筆を動かし完成させるた神の姿。

ある時彼女は思ったそうだ。
写真って薄っぺらいなあと。

でもそれは1秒のこと。
すぐに視点を動かせるのが彼女らしさ。
なぜって彼女はひどくこだわっているからだ。
だから一秒経てば前向きになれる。
シャッターを押すのは一瞬でも、
その一瞬のために彼女は一生さえ生きるだろう。

「沖縄のことをもっともっと撮りたい」
内地に行っても外国に行っても彼女は沖縄を撮る。
沖縄以外のものはそこの土地の人が撮ればいい。
それが彼女の写真の流儀。

2013年2月には横浜市民ギャラリーで意欲的な石川真生展の開催が決まっている。
1970年代、1990年代、2010年代。
二十年の変化によって切りとられた彼女の視る世界。
楽しみでたまらない。



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★Bar&Gallery土で5/15まで開催されている石川真生写真展「沖縄ソウル」についてはこちらをご覧ください。
http://www.facebook.com/events/407444049267294/
★石川真生さんについて英語で知りたい方はマネージャーの内間直子さんがまとめているブログをご覧ください。
in English http://maoishikawa.ti-da.net/


以下は内間直子さんから借用しました。

【プロフィール】
1953年大宜味村生まれ。豊見城市在住。1974年に、ワークショップ写真学校「東松照明教室」で学び、故郷の沖縄で、一貫して沖縄と、そこに関わる人々に焦点をあてて写真を撮り続けてきました。また、写真家としてだけではなく、執筆、講演活動なども行っています。

これまで、東京、大阪、奈良、名古屋など、国内の主要都市で展示会を開催。2006年、ニューヨークのコーネル大学で個展、2009年沖縄県立美術館でグループ展「アトミック・サンシャイン」、2008年東京国立現代美術館企画展「沖縄・プリズム 1872-2008」、2005年アメリカ、ブラウン大学「沖縄ソウル」展、2004年ニューヨークのP.S.1コンテンポラリーアートセンター(MoMA―アメリカ近代美術館)「永続する瞬間・沖縄と韓国、内なる光景」、横浜美術館「ノンセクト・ラディカル」、2003年オーストリアのグラーツ市美術館のカメラ・オーストリア特別企画展などに参加。

【主な著書】
「熱き日々 in キャンプハンセン!!」(比嘉豊光との共著、あーまん企画、1982年)
「港町エレジー」(自費出版、1990年)
「仲田幸子一行物語」(自費出版、1991年)
「沖縄ソウル」(太田出版、2002年)
「LIFE IN PHILLY」(Gallery OUT of PLACE、ZEN FOTO Gallery、2010年)
「FENCES, OKINAWA」(未来社、2010年)
「日の丸を視る目」(未来社、2011年)





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Posted by 楽しい亜熱帯 at 08:57│Comments(0)photo
 
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